羽田空港から長崎空港へ,そして長崎港からジェットフォイルで1時間半,下五島福江島の福江港に参加者26名で到着。
バスで福江島を行く。島には今も鉄道が無いというのに,車にもほとんど出会わない。道を挟んで仏教徒とキリスト教徒が住み分けてきたというこの地は,墓地もそれぞれの側にある。山は緑が濃く,水田が広がる。ほととぎすの鳴き声があたりを包む。
まず,島の西の端の井持浦教会へ。日本で最初に造られたというルルドの洞窟の深い緑を背に,陶製の白いマリア像が印象的だった。
この後,日本で最後の夕陽が見られるという,東シナ海に突き出た断崖に立つ大?崎灯台へ。しかし,一時うっすらと雲が茜色に染まったが,夕陽には出会えなかった。
2日目は,まず堂崎教会へ。この教会は五島の布教の拠点となった所。外観の一部にはイタリアから運ばれた赤煉瓦が使われたゴシック様式で,内部は木造,ステンドグラス,蝙蝠天井(リブ・ヴォールト天井)など堂々とした天主堂建築で,キリシタン資料館ともなっている。
次の水ノ浦教会は,木造教会堂としては最大規模という白亜の天主堂。尖塔の先の十字架が眩しい。運良く庭仕事をしていたシスターに出会い,お話を伺うことができた。
教会に限らず,島には誰かが手入れをしていると思われる花があちらこちらに咲き,商店の数の割に鉢物や植木を扱う花屋さんが多い。
その後,鬼岳へ。名前とは裏腹になだらかな曲線の山は芝生に覆われ,気持ちのよい風が吹き渡る。
午後は,チャーター船で久賀島の旧五輪教会堂へ。外観は古い日本家屋の様だが,中は蝙蝠天井,ガラスの間に色を挟んだ窓がステンドグラスの様に輝く。
続いて,キリシタンが隠れ住んでいた絶壁のキリシタン洞窟へ。現在は上陸禁止ということで船上からのみの見学,残念だった。
上五島のホテルにチェックイン後,夕闇の中,バスで一山越えて,『空と海の十字路』というおしゃれな名前のレストランで五島牛のビステッカetc.…。深更の星空は山の星空とも異なり,真に美しかった。
3日目は,まず青砂ヶ浦天主堂へ。この天主堂は島の教会を幾つも手がけた鉄川与助によるもので,煉瓦造りの教会堂の完成形といわれる。
焦げ茶色のアーチが美しい白い天井を見上げていると,「讃美歌が歌いたくなった,歌おうよ。」の声に,期せずして皆で『いつくしみ深き』をアカペラで讃美。高い天井に響く歌声が心に残った。
「わきおこる讃美歌に和す堂涼し」 眞由美
旅の最後は,信者たちが自ら切り出した砂岩を積み上げて造った頭ヶ島天主堂へ。ハンマービーム架構の独特の天井のアーチと花の御堂とも呼ばれている花柄の装飾が個性的で美しかった。
どの教会も過去の哀しい歴史の遺物ではなく,現在も島の人々の礼拝の場であり,そのたたずまいが清清しい。
駆け足の旅ではあったが,初参加の私と娘も皆様と共に楽しく過ごさせていただいた。
「殉教の島のしじまや麦の秋」 眞由美
(執筆者:後藤眞由美)