日時:2023年5月27日(土) 14:00〜15:00
会場:アイビーホール シノノメ (対面+YouTubeライブ配信)
第14回総会を対面+YouTubeライブ配信にて開催した。(出席状況:出席者38名、委任状198通、合計236名)
2022年度事業・活動報告、決算報告の後、2023年度事業・活動計画案、予算案、新役員構成案、会則の一部改正案が審議のうえ承認された。
三期6年の任期満了に伴う佐野弘子会長の勇退を受け、第7代新会長として吉波弘副会長が選任され、西本あづさ本学科教授が新たに副会長に就任した。また、新役員として常任幹事1名、幹事2名が加わった。
総会後、寺澤盾英米文学科教授による総会記念講演が行われ、現代英語の文法に見られる不思議を英語史の観点からわかりやすく紐解いてくださり、英語史と現代英語との繋がりを改めて知ることとなった。
引き続き懇親会は終始楽しく和やかな雰囲気の中で行われ、4年ぶりの対面での再会を皆で喜び合った。
久々の対面開催に笑顔あふれる出席者
英米文学科同窓会第14回総会記念講演
日時:2023年5月27日(土) 15:10〜16:20
講師:寺澤 盾氏(青山学院大学文学部英米文学科教授)
演題:3単現に-sを付けるのはなぜ?
―英語史から英語の不思議を読み解く
コロナがようやく落ち着き4年ぶりに対面で総会記念講演が開催された。
「3単現に-sを付けるのはなぜ?」を含む3つの英語の不思議を取り上げ、英語史の観点から読み解いてくださった。
1.3単現に‐sを付けるのはなぜ?
会場にビートルズナンバー“Ticket to Ride”(涙の乗車券)が流された。She’s got a ticket to ride but she don’t care ― she なのにdoesn’tでないことに先生も中学生の時、疑問を感じたそうだ。現代標準英語では間違っていると思われるようなこうした動詞活用はそれほど珍しいことではなく、イギリス東部、東南アジアの英語、アメリカ黒人英語などで広く使われている。英語史から見ると、3単現に-sを付けるのは、中英語(北部の方言)の動詞活用に由来するそうだ。
2. doの多義性
doは古英語のdonからきていて、donは「する」という意味と並んで「させる」の意味を持つ本動詞であった。後者から派生したのが、はっきりとした意味をもたない迂言のdoである。迂言のdoは、過去と現在が同形の動詞の前にdidを入れることで時制を区別したり、韻文の弱強の韻律が崩れないために使われたりして細々と生きながらえていたが、(S-V-O)の語順を維持するため助動詞として疑問文や否定文に使われるようになってからは文法上重要な役割を担うようになった。
3.2人称代名詞で単数・複数の区別がないのはなぜ?
英語ではもともと2人称単数(あなた)と複数(あなたがた)を区別していたが、フランス語の影響で、本来複数形のyouが単数敬称として、本来単数形のthou が親称として用いられるようになる。それを踏まえ『ハムレット』の一場面、父王の死を知らされ急遽帰国したハムレットと新王(叔父)と王妃(母)との対話が引用された。叔父の新王が、甥のハムレットに対しyou(敬称)で話す心理的意味について大変興味深い解説をしてくださった。なお、英語史ではその後、thou が用いられなくなったために、現代英語では単数も複数もyouとなったが、you guysのような新たな2人称複数形が生まれており、将来2人称複数形が復活する可能性があるかもしれない。
今回の講演を通じて、現代英語には様々な英語変種が存在すること、そして現代英語の背景に興味深い歴史があることを知っていただけたら幸いであると述べられ講義を結ばれた。