2018.10.05 更新
創造工学の草分け 2018/9/5村尾麟一
私の青学大在任期間は昭和 54?平成 7 年(1979‐1995)であったので当時は機械工学科であった。機械創造工学科と改称されたのは定年引退後であったので、そのいきさつを詳しく知っているわけではないが、その改称の草分けに些か寄与したのではないかと自負しているので我田引水してみたい。
昔から小′中・高校の延長として大学も基礎・専門科目の学習が主目的であって、創造力の発揮は社会生活に入ってから後の個人的なものと理解されていた。就職面接は学力より個性を知ることに重点があり、創造性はその重要ポイントである。
卒研になれば個人あるいはグループの創造力が試される。しかしテーマは教授の専門分野から与えられて選択の自由しかない。初めから創造力発揮それ自体を目的とする教育は出来ないものか。
時期は多分平成の初め頃であったと記憶するが‘創造工学'と称する選択科目を掲げて志望者を募集した。一体何をやるのか。創造は何をやるかから始まる。研究テーマを自分で考えろ。・・・・ アイデアを出すものは誰もいない。今までそんなことを自分で考えたことが無いようである。やむを得ない。最初は創造性への興味と意欲を促すテーマを提供しよう。意欲を刺激するには面白いほうが良い。
4 階校舎の屋上からロープを一本垂らして予算\5,000 で地上から上までなるべく早く登って降りてくる装置を設計・製作・実行せよ。
個人・気の合ったグループで毎週創造工学の時間に討論させた。うまいアイデアがあると真似をしたがる。うるさく言わないで放任しておく。手始めに試作してみる。手先の器用な者のほうが良いアイデアが出るようである。手で考える。人の真似をしても工作能力で差が出る。
最短時間の優勝者・ユニークなアイデアに賞品としてビールを提供する事にした。車でローブを挟んでモーターで駆動する常道のほかに尺取虫型が出てアイデア賞。人気が出て志望者が増した。ここまでが創造工学の草分けである。
原点に戻れば問題はテーマの案出にある。完全フリーにテーマを学生に提案させて学科全体で対応.できれば理想的であるが、努力目標として学生に指導教官を選ばせると同時にテーマを提出させる。指導教官はそのテーマを第一優先として一定期間検討の上指導能力も考慮して採決する。学科としては指導能力に努力目標を含めることで指導教官の創造性開発を促進する。
現実論としては学部の選択科目に含ませるよリゼミの討論主題として独立させる事になった。水ロケットとそのパラシュート回収・4階校舎屋上から手投げして比較的狭かった世田谷時代の校庭で飛行・安全着陸可能なラジコングライダーの設計・製作・操縦等を思い付いて卒研・修士研に取り入れることになった。創造工学には指導者の能力と見識が試される。機械創造工学科が看板だけではなく常に旧体質脱皮の原動力を持つことを期待したい。