2008年に寄稿されたものを再度ここに掲示します。
29年のタイムスリップ 服部仁志 (11期)
お蔵入りになっていたアルバムを引っ張り出してきて,卒業式の写真を眺めてみました.時は1979年3月.もう29年も過ぎていました.みんな元気にやっているのかな?当時の研究室の同窓とはすっかり疎遠になってしまいました.このページ見たら,是非,ご連絡を!
卒業パーティでは,名前を忘れてしまったけど,女性タレントの司会者につかまって,ステージでインタビューを受けた記憶がよみがえってきました.ずいぶんはしゃいでいるみたいですけど,今見ると,やっぱり古さは感じますね.あの頃にやり残したことが,たくさんあるような気がしてきました.マイク向けられて,「どこに就職するんですかー?」「いえ,理工系なので,このまま大学院に進みます」「へえーっすごいー!!見・か・け・に・よ・ら・ず,秀才なんだー」「う...」
技術系では特別なことでも秀才でも何でもないのに,こんなやり取りだったことが昨日のように感じます.それから2年間の大学院生活の後,東芝に入って川崎の研究所でトライボロジーという技術分野を担当することになりました.トライボロジーといっても普通の人にはわかりません.だけど,摩擦・摩耗・潤滑を総称した技術領域だと説明すると,たいていの機械系エンジニアは理解してくれます.車のエンジンを快調に吹かし,燃費を維持するために,エンジンオイルを定期的に交換します.これはシリンダ・ピストンやバルブ・カムの摺動面で発生する摩擦のダメージによって,摩耗を防いでいたエンジンオイルという潤滑油が劣化し,本来の潤滑機能が損なわれてしまうからです.「ドアの蝶番がキーキーいったら,油をペコペコさす」「ふすまがガタガタいって,すべりが悪くなったら,さんにロウをごしごし塗る」技術的な理屈が通用しない普通のおっちゃん,おばちゃんには,そういうふうに説明します.
こう書くと簡単そうに見えますが,宇宙空間のような真空中では普通の油はあっという間に蒸発します.リニアモータカーの超電導磁石のヘリウム冷却系の極低温では,油はかちかちに凍ってしまいます.そういう尋常でない環境の潤滑に取り組んでいるわけですが,具体的には,ヤフーかなんかで「服部仁志」「東芝」をキーワードに検索していただければ, なんか出てきます.人工衛星,原子力からエアコン,冷蔵庫まで東芝グループの新製品開発で潤滑の問題がクリティカルになるたびに呼び出され,製品技術者と一緒になって開発に取り組みます.ときには,単なるトラブルシュータとしてこき使われます .
他方では,オリジナルなシミュレーション,計測技術などを研究開発し,事業部にテクニカルトランスファするのも,ミッションの一つです.下のほうの写真は卒業から 27年たった2006年のもので,米国のPurdue大学で開催されたInternational Compressor Engineering Conferenceに出席した際,他メーカの日本人参加者と日本食レストランでのパーティの模様です.写真の左が服部です.ずいぶんトシを取りました.右は旧来の友人で,今は米国のコンプレッサメーカで働いています.
Purdue大学はIndianapolisからシャトルバスで1時間半くらいにあるLafayette, West-Lafayetteという小都市にあります.左はAmtrakの駅ですが,旅客列車は一日,一往復だけです.この国際会議では,エアコン,冷蔵庫を主とした冷凍技術,コンプレッサ技術,フロン冷媒などの最新の研究開発が議論されます.会議は 2年ごとに開催され,今年もあっつうい7月に あります.当社からも2件くらい講演発表することになっていますが,プレゼンは若手にまかせ,服部はほとんど「ア・ソ・ビ」??いやいや,現地で日本人参加者をまとめ上げ,情報交換会ならびに懇親パーティ(こっちのほうが注力大??)を開かなくてはなりません.大役が待っています.ということで7月を楽しみに,日々の労働に励んでいる今日このごろであります.
(2008/04/23)